こんにちは!期末エッセイのために図書館にこもるを日々を送っていm、嘘です、旅行してます。ユキです。
学期中、ベルリンを拠点とする「Flüchtlinge Willkommen」(詳しくはこちらの記事で!)の創設メンバーであるMareikeが、大学のゼミにゲストスピーカーとして来てくれていて、直接質問したり、話を聴くことが出来ました。
とても自然体でカッコよく魅力的な人で、久々にベルリンで勉強してて良かったなと思いました。(笑)
さて、今回はそのFlüchtlinge Willkommenによって行われている、難民への偏見に対抗するキャンペーン「Search Racism. Find Truth.」をご紹介します。
Search Racism. Find Truth. – 差別主義を検索して、真実を知る。
反難民団体の演説動画をYoutubeで再生すると、まず広告が始まる。
スキップできないタイプの広告のため、仕方なくみていると、シリア難民の男性が、流暢な英語で語り掛けてくる。
「今から始まるビデオで政治家が、難民は全員犯罪者だと主張するけど、僕は今まで一度も刑務所に入ったことがないんだ。あ、この政治家はあるみたいだけどね…」
広告が終わり、ポピュリストによる演説が始まる。
「難民たちは俺たちの街にやってきて、犯罪をしてまわっているんだ!!!!!」
差別主義を検索して、真実を知る。
YouTubeの広告を利用したこのキャンペーンの仕組みはとても簡単で、効果バツグン。
上に紹介したもの以外にも、沢山のビデオ広告が展開されています。
こちらがキャンペーンの紹介ビデオ。英語ですが、是非見てみて下さい。
以下、キャンペーンの背景と合わせて紹介していきます。
広がる難民への偏見
2015年、ドイツには110万人を越える大量の難民がやってきました。
初めは難民を温かく迎え入れたドイツ社会も、その膨大な数への対応が間に合わないこと、大晦日にケルンで起こった集団窃盗・性的暴行事件などにより、難民に対し徐々に懐疑的になってきています。
第二次世界大戦におけるユダヤ人迫害の歴史を持つドイツでは、難民受け入れを非難することタブー視し、人道的な対応を積極的に行ってきていましたが、あまりの数に対応が追い付かなくなってしまったというのが現状です。
そんな中、難民への偏見も強まっていきました。
「難民はテロリスト」「難民は犯罪者」といった、事実に基づかないことをうそぶくポピュリスト政治家や、それを信じる人々が増えていきました。
実は、難民危機が始まる前からも、PEGIDA¹など、排外主義の運動はありました。
それらの運動が、大量の難民流入とその混乱の中で、極右ポピュリズム政党のAfD²などに利用される形で難民、あるいはムスリムに対する偏見を助長しました。

ドイツのための選択肢党

ペギダによるデモ(ドレスデンにて)
難民に対して過激な犯罪行為に出る人々もいます。
難民施設等への放火は、2016年一四半期に345件もありました。
ドイツで今、難民たちは彼らに向けられる拒絶や憎しみと直面しているのです。
- PEGIDA(ペギダ) : Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlandes(西欧のイスラム化に反対する欧州愛国者)の略、通称。2014年10月にドイツ、ドレスデンで始まった排外主義運動とその団体。
- AfD(アーエフデー) : Alternative für Deutschland(ドイツのための選択肢)の略、通称。2013年2月にドイツ、ベルリンで設立された極右ポピュリズム政党。ドイツの8つの州において州議会で議席を持つ。
どうすれば難民への偏見を正せるか
ドイツにやってきた難民を上手くドイツ社会に統合させてくために、様々な困難を乗り越えていかなければならない今日、このような偏見は解かれなければいけません。
偏見や差別を助長するポピュリストたちの最大の武器はインターネット。
そこで、ドイツの難民支援NGOのRefugees Welcomeは、難民たちと協力して、素晴らしいアイデアをもとに、偏見の蔓延するインターネットで、キャンペーンを始めました。
難民への偏見をまき散らすポピュリストによるYouTube上の動画に、スキップ不可の広告として、難民自身が真実を語る映像を挿入します。
「難民たちは全員犯罪者なんだ!」と極右活動家が叫ぶビデオの前に、他のほとんどの難民と同じように犯罪歴のない難民が登場し、自分には犯罪歴はないことを宣言します。ちなみに、この活動家には投獄された経験があるそう。

「私たちがドイツ語を学ばないというのは偏見です。(ドイツ語で)」

「難民はドイツ語を学ばない!!」
「ムスリム共はドイツに馴染もうとしない!今すぐドイツから去れ!」とドイツ人女性が怒鳴り散らすビデオの前に、ムスリムの難民がドイツ語で、私たちがドイツ語を学びたがらないというのは偏見である、と語ります。
「難民は金のためにドイツにやって来ているんだ!」というビデオの前には、シリア難民の女性が現れ、彼女の3人のいとこが紛争で殺されたこと、それでも視聴者は彼女がお金のためにドイツに来たと思うのか、と問いかけます。
偏見を冗長する目的で作られたビデオが、このキャンペーンによって、如何にそのビデオの内容が間違っているのかを強調するものとなっているのが分かるかと思います。
難民危機と差別主義
文化も言語も異なる難民を受け入れるということは、決して容易ではありません。
政治的にも、文化的にも、財政的にも、大きな負担とチャレンジが待ち受けています。
実際に、現状には多くの問題があることは疑いようのない事実です。
差別とは別のところで、難民受入の方法は議論されるべきでしょう。
税金が難民に費やされることへの不満、知らない相手への恐怖が、直接関係がないはずの失業率や将来への不安や日々の苛立ちと結びつき、「すべては難民が悪い」と責任転嫁をすることで、現実の問題から目を逸らすことは簡単です。
しかし、本来紛争やテロの最大の被害者である難民に、テロリストや犯罪者のレッテルを貼り付け、拒絶することは、人類がこれまで数世紀かけ築き上げてきた人権や平等を基礎とする社会を根本から否定することにもなりえます。
そしてそのことこそがテロの狙いなのではないでしょうか。
難民への偏見や差別を否定すること。
難民を受け入れ、支援すること。
これは私たちの生きている世界の価値観を守り、そして、テロに打ち勝つ最善の方法なのかもしれません。
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