過激派から若い難民を守るドイツの試み -難民ニュースまとめ vol.7 (7/18-7/23)

どうも、メンバーのアンドレです~。先日やっと大学のテストなりプレゼンなりが全て終わり、ドイツでの最後の2週間を満喫中です!

最近大学が忙しく、このニュースまとめしか記事を書いておらず、そろそろ何か別なものも書きたくなってきています。

さて何を書こうか….(というか体験談がまたなおざりになってきてる….)

 

難民ニュースまとめ

先日、「先週の難民ニュースまとめ」では名前が長いという意見があったので、名前から「先週」だけをとってみました。しかし名前を削っても内容は全く削っていないのでご心配なく!!!笑

では振り返っていきましょう!

7/18 (月)

7/19 (火)

7/20 (水)

7/21 (木)

7/22 (金)

7/23 (土)

 

難民ニュース、ピックアップ記事

金曜に紹介した記事で、9/19に難民と移民を議題にした国連サミットがニューヨークで開かれる、というものがありましたね。

そこでまたどんな声明が採択されるのか、今後ニュースを追っていき、新たな情報があればまた記事としても紹介したいと思います!

 

ついにドイツにもテロの手が・・・・

今回のピックアップ記事はまたそれとは別に、先週あったショッキングなニュースです。

月曜日の夜(日本時間は火曜日の朝)、僕がトルコのクーデタ関係のニュースを見ていたら突然速報として、あるニュースが飛び込んできました……

ヴュルツブルクにおけるテロ事件。 -南ドイツ新聞の記事より URL: http://goo.gl/3Tva0R

ヴュルツブルクにおけるテロ事件。 -南ドイツ新聞の記事より
URL: http://goo.gl/3Tva0R

ドイツ南部のヴュルツブルク近郊の電車内で、難民申請中の17歳のアフガン人青年 (実はパキスタン人という情報も…)が、斧やナイフで乗っていた乗客を切り付け、3人が重体、1人が軽傷を負った、とのことでした。

犯人はその後電車から逃走しましたが、偶然近くで演習をしていた特殊部隊員が対応、犯人が部隊にナイフを構え向かって行ったため、射殺されました。

この事件ではテロ組織、イスラム国 (IS) が犯行声明を出し、ドイツ当局も繋がりがあったという事は確認しましたが、どれほどの深い繋がりがあったのか、犯人がどのタイミングで過激化していったのか、まだ不明な点が多いようです。

さらには昨日起きたミュンヘンでの通り魔殺人事件。これは難民とも、動機もイスラム教とも関係がないと見られていますが、この犯人も18歳のドイツ人でした。

 

ヴュルツブルクの若い難民はなぜ過激化したのか?

このヴュルツブルクの事件を通じて、ドイツで再び議論され始めているのが、保護者のいない未成年難民を、どうやって過激派から守るか、という事です。

犯人であった17歳のアフガン人青年も、アフガニスタンから1人でドイツまで辿りついていました。

ドイツには現在、保護者のいない未成年の難民が約5万人いると見られています。

彼らが1人でヨーロッパにいるのには、様々な理由(注1)があります。

言葉が通じない新しい国で、難民申請が進まないために語学学校にも通えない彼らは、1日中、言葉の通じる同じ国の人たちと一緒にいるか、インターネットで時間を潰すことしかできません。

そこの孤独に、過激派が漬け込む隙ができます。

支持者を増やそうと難民施設に出入りし、イスラム教にあまり通じていなかった穏健なムスリムの難民を過激派に変えるサラフィスト(注2)たち。

ドイツで悪名高いサラフィスト、Pierre Vogel http://www.elbe-wochenblatt.de/wilhelmsburg/lokales/der-salafist-pierre-vogel-sucht-offenbar-eine-wohnung-in-hamburg-und-hat-sich-auch-schon-in-wilhelmsburg-umgesehen-m35860,29504.html

ドイツで悪名高いサラフィスト、Pierre Vogel  URL: http://goo.gl/b1HnNP

暇つぶしがてらインターネットに上がっているISなどのプロパガンダビデオを視聴し、思想に共鳴してしまう若い難民たち。

ここに、この「イスラム過激主義とは無縁であった」と周囲の人に言われていたこのアフガニスタンからの難民が、電車で無差別テロを起こすまでに急激に過激化した、と考えられています。

(注1) ドイツ移民・難民局によれば、
1. 強制結婚など、地域の風習を強制されるの嫌い自分たちの家族から逃走したケース
2. 難民として認められた後に家族を呼び寄せるためや、経済的な問題で家族によって1人で送り出されるケース
3. 家族とともにヨーロッパを目指したが、旅の途中で家族を亡くしたケース
など、様々なケースがあるようです。
(注2) 自分たちがコーランの唯一の正しい解釈者であると信じ、穏健なイスラム教徒が不信心者であると考える過激派スンニ派のイスラム過激派組織員。

「過激派から若い難民を守る」~ドイツの民間組織の活躍

実はこの若い難民の教育に関する議論は今に始まったことではなく、11月にあったパリの同時多発テロ(注3)のあと、新しくドイツに来た若い難民や、ドイツ生まれのイスラム教徒に対する「正しいイスラム教」の教育の必要性は幾度となく叫ばれていました。

しかし、受入の是非やその上限に関する議論が政府内で続き、ドイツ社会への統合政策に関する議論は最近までかなり等閑になっていました。

ではドイツでは、これら過激主義からドイツの若者、さらに若い移民・難民を守るためどのような活動が行われているのでしょうか?

今回は数あるものの中で、民間組織が行っている脱過激主義の支援を紹介します。

(注3) 2015年11/13 (金)にパリ市街と郊外、サン=ドニ地区の商業施設において、IS(イスラム国)の戦闘員と見られる犯人による銃撃および爆発が同時多発的に発生。死者130名、負傷者300名以上を出したテロ事件。

 

HEROES

2012年に南部の都市、アウグスブルクで設立されたのが、HEROESという社団法人です。

この団体は、いわゆるイスラム教の「名誉に基づく文化」出身の若者に対して、定期的に集会を開き、グループディスカッションを通して、「名誉とは何か」「男女平等とは何か」「男らしさとは何か」といったテーマについて考えています。

グループディスカッションの様子。-HEROESのHPより。 http://www.heroes-augsburg.de/?page_id=27

グループディスカッションの様子。-HEROESのHPより。
http://www.heroes-augsburg.de/?page_id=27

彼らは、親世代からの伝統の強制との葛藤をここで語り合い、ドイツ社会でどのように生きていったらいいのか、ということを意見の交換を通じて学んでいくそうです。

このような場を設けることは、いわゆる「西洋的価値観」を学ぶ以外でも、彼らに同じ悩みをもった人たちとのコミュニティを作る役割を果たし、孤独から解放し、サラフィストといった過激主義から遠ざける意味でも大きな役割を果たしています。

 

HAYAT

もう一つは、HAYAT(アラビア語、トルコ語で「命」という意味)という、2011年に設立された相談所です。

HAYAT

HAYATのロゴ – HAYATのホームページより

ここは主に過激主義に傾倒しそうになっている人や、すでに傾倒し組織に入ってしまった、さらにはジハディスト(注5)として中東地域に家族や友だちが行ってしまった人が相談することができる団体です。

もとはネオナチといったドイツの極右主義に傾倒してしまった若者支援団体が基礎にあり、そこからイスラム過激主義を防ぐ団体へと発展しました。

最初はトルコ系の若者が主な対象でしたが、ISといったテロ組織の台頭で、たくさんのドイツの若者がジハディストとして中東の戦場に向かってしまったこと、その原因がドイツ国内の過激なサラフィストに影響されていたことにあったことから、現在またその役割に注目が集まっています。

(注5) 聖戦主義者の意味。もとは「全力を尽くし努力する」という内なる自分との戦いを意味していたが、9.11後、イスラムの名において異教徒と戦う、イスラム過激派のテロ実行者としての意味で使われている。

 

まとめ

もちろん、サラフィストといった過激思想を広める人を取り締まることが彼らを守る一番の近道ではあるでしょう。

しかしドイツはナチス時代の反省から、思想・言論の自由の制約がかなり難しいといった側面があり、法整備が進んでいないのが現状です。

そのような中で、悩み多き若者たちに寄り添い、声を聞いてあげ、過激主義に傾倒する隙を与えないこれら団体は活躍は現在、欠かすことのできないものとなっています。

 

今日は以上です!来週もまたお楽しみに!

先週までの難民ニュースをご覧になりたい方は、こちらにまとめてありますので、ぜひご覧ください!


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